松本清張作品の映画

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小説は結構読んでいるけれども、
松本清張原作映画には、点と線ではまった。昭和の風景がとても懐かしい。
張り込み目の壁点と線あるサラリーマンの証言波の塔ゼロの焦点寒流ある遭難霧の旗けものみち影の車黒の奔流砂の器鬼畜疑惑天城越え



 昭和32年1月 松竹 モノクロ
監督 大曽根辰保
出演 大木実、岡田茉莉子、笠智衆

九州炭坑で労働争議の結果クビになった石岡三郎(大木実)は、列車の洗面所の中で、無免許医師の飯島と、東京でファッションモデルとなるきっかけをつかんで上京中の水原秋子(岡田茉莉子)とが言い争っているのを目撃する。もみ合いの結果、飯島は列車から転落する。現場から逃げ去った水原は、飯島が担ぎ込まれた病院に様子を見に行き、飯島が息絶えたことを確認。長谷川刑事(笠智衆)は、飯島が他殺ではないかと疑う。
上京した水原は、先輩モデルのパトロンをうまくつかまえ、ファッションモデルのスターダムをのし上がっていく。石岡は、東京に来ていても、田舎者扱いでうだつが上がらない。そんな中、雑誌を見て、飯島の死を知る。言い争いを目撃したとして警察に行き、モンタージュ写真作成に協力したり、毎朝新聞記者にネタを売り込んだりしょうとするが。水原は、こうした石岡の存在を知り、証人を消すため手紙を送って誘き出し、鉄塔から突き落とすことを考えるが。。。原作の「顔」は、石岡が列車の中で目撃するのは、映画男優の卵の顔。犯人がスターになっていくというラインは原作をふまえているが、映画は。大幅に脚色されている。
ファッションモデル役の岡田茉莉子さんが若くきれいで、一瞬だれか分からなかった。失礼。
映像を見ていると、飯島の列車からの転落シーンで、すれ違う列車の影と扉に挟まった手の動きとか、ヒッチコック監督の作品を思い出すようなところが見られる。きわめつけは、鉄塔から石岡を突き落とすことを水原は空想するするシーンがあるが、そこで登場する渦巻きは、まるで「めまい」?と思ってしまうのだが、よく考えたら、めまいは1958年公開、こちらは、57年公開。ということは、「渦巻き」はこちらが元祖?なお、鉄塔はTBS敷地内にあった旧電波鉄塔か?形が似ている。



張込み 松竹 昭和33年公開 モノクロ
監督 野村芳太郎
出演 大木実、宮口精二、高峰秀子、高千穂ひづる、田村高広

暑い夏の夜、横浜駅で刑事柚木(大木)と下岡(宮口)は鹿児島行き急行に飛び乗る。彼らは、深川の質屋で発生した強盗殺人の共犯者で拳銃を所持して逃亡中の石井(田村)を追跡していた。彼らは、石井が、昔別れた恋人のさだ子(高峰)のもとに現れると可能性にかけて、後妻として嫁いだ先の佐賀までの出張である。丸一日、列車に揺られて佐賀に到着してから、彼らは、さだ子の家の向かいの宿屋に部屋をとる。そこで、さだ子のもとに石井が訪れないか、手紙かなにかで連絡をつけてこないか、毎日、見張り続けることに。しかし、さだ子は平凡な生活を送り続けている。たまに、出かけても、買い物か、夫の代わりに法事にでかけるだけ。柚木は、さだ子の、平凡な生活を見張り続けていくうちに、なんら罪のないさだ子の平和な生活を台無しにしたくないという気持ちをもつようになっていく。「今ならばバスに間に合う」と、終盤の宝泉寺温泉でのクライマックスの中にも、柚木のさだ子に対する気持ちが現れている。また、この事件を通じて、柚木自分自身の恋人(高千穂)に対す気持ちがはっきりしていくヒューマニズムの映画。



目の壁 松竹 昭和33年10月公開 モノクロ
監督 大庭秀雄
出演 佐田啓二、鳳八千代、高野真二、朝岡雪路、宇佐美淳也、渡辺文雄、西村晃、織田政雄、多々良純

昭和電業株式会社の会計課長関野(織田)は、資金繰りのため山杉商事を訪ね、東洋相互銀行の大山常務を紹介してもらい3千万円の手形を渡すが、実はそれはパクリ屋であった。責任をとれと役員に叱責され、関野は自殺。事件の経緯を手紙で知らされた関野の部下萩崎竜雄(佐田)は、事件の追及を始める。山杉商事を訪ねると女事務員上崎絵津子(鳳)が出てくる。萩崎は、上崎を尾行すると、船坂の邸宅にたどり着く。萩崎は、友人で記者の田村(高野)から、船坂は、政界を裏から動かしている政界ゴロだと説明される。船坂邸を、萩崎と田村は訪ねると、山崎事務長(宇佐見)が現れ、船坂は不在であると二人を追い返す。事件を追って萩崎は、銀座バーのレッドムーンに乗り込むと、そこに上崎が現れる。レッドムーンでは怪しげな男達−山本(渡辺)と田丸(多々良)−も登場し、詐欺事件が、殺人事件に発展。萩崎は山崎を追って、瑞浪にたどり着くが、そこにも上崎の影が。。。
ストーリーの展開はかなり強引、かつ、終盤の活劇などは目が点になる部分もあるが、昭和30年代の東京と地方(瑞浪や北巨摩郡付近)を見られて、結構楽しめる。


点と線  昭和33年11月公開 東映東京作品 カラー
監督:小林恒夫
出演:南廣、高峰三枝子、志村喬

冬の香椎海岸に男女の心中死体が発見される。この心中事件に、福岡県署の鳥飼刑事が疑問を持つ。その後、東京の三原刑事が汚職事件関連で鳥飼刑事を訪ねてくる。。。
昔見たときには、モノクロのようなイメージがあったのだけれども、それは勘違い。カラーだった。おそらく、途中で登場する蟹がうようよ這っている中での心中シーンの暗さがあまりに印象にあったのと、国鉄香椎駅から西鉄香椎駅に向かって歩く男女の寂しいシーンが夜だったので、「黒」のイメージが強かったのだろう。当時の国鉄の列車を九州から北海道まで堪能できるのと、病で療養中の役の高峰三枝子さんが、とても儚い感じをだしていてよい。



黒い画集 あるサラリーマンの証 昭和35年 東映 モノクロ
監督 堀川弘通
脚本 橋本忍
出演 小林桂樹、原知佐子、西村晃、平田昭彦

平凡なサラリーマン石野 東和毛織株式会社管財課長(小林)は、実は同課員の梅谷千恵子(原)と不倫関係にある。ある日、新大久保の千恵子の部屋を訪ねた帰り、大通りに出る途中で、石野は、玉川線の先の郊外にある自宅近所の杉山と偶然すれ違う。互いに軽く挨拶した後、石野は千恵子とのことがばれないか非常に後悔する。なんで、あんなところで挨拶してしまったのだろうか、何事もないことを期待する。が、杉山が殺人犯として逮捕され、アリバイとして石野とすれ違ったことを主張。このため、刑事(西村)が、東和毛織の石野を訪ねてくる。石野は、梅谷とのことが明るみになることを恐れ、会っていない、その時間には渋谷で映画を見ていたと証言。新大久保との関わりを断つため、梅谷を引っ越させる。引っ越し先には、若い学生が住んでいて、その学生の友人の貧乏学生もよくたむろしていた。梅谷は学生達と行き来するようになる。石野は、杉山とは会っていないと裁判でも証言しつづけるのだが、、、、ちょっとした偶然による知人との思いがけない場でのあいさつが引き金で生活が変わっていくこわ〜い映画。平凡なサラリーマンの話である原作「黒い画集・証言」(たかだか文庫本で20ページ程度)を骨格に、さまざまなエピソードを紡いでいった作品。かなり緊張感があった。


波の塔 昭和35年10月公開  松竹 カラー
監督 中村登
脚本 沢村勉
出演 有馬稲子、津川雅彦、桑野みゆき、南原宏治

役所の局長の娘、田沢輪香子(桑野みゆき)は諏訪旅行で、検事の卵の小野木喬夫(津川雅彦)に出会う。その後、深大寺でも偶然出会うが、そのときに小野木は人妻らしき女性と一緒に。この女性は結城頼子(有馬稲子)といい、劇場で気分が悪くなったときに偶然隣にいた小野木が介護したことが縁で付き合うようになりデートを重ねていた。頼子の夫結城康雄(南原宏治)は、頼子に対して冷たく、また、浮気をしていた。輪香子は小野木に好意を持ち、小野木とともにいた頼子にも感心を示す。こうしたなか、結城が出張している間に、小野木と頼子は、山梨県の下部温泉に旅行にでるが、旅先で台風に遭遇。二人は台風の中、強行軍で東海道線まで歩いて行き、結城が帰宅する前に家にたどり着く。
今の姿からでは想像しにくいが、津川雅彦さんが若くてすがすがしく、また、有馬稲子さんがとてもきれい。映像が(すこし不自然な色にも見えるくらいの鮮やかな・濃い色の)カラー(ヒッチコックの「鳥」の色に似ていると思った。)で印象的。下部温泉も夜なのに鮮やかな印象が残る。基本的には原作に忠実で(文庫本で2分冊分なので、結構はしょることになるが)、かなりロマンチックな香りの映画。「どこにも行けない道ってあるのね」がテーマ。



ゼロの焦点 昭和36年3月公開 松竹 モノクロ
監督 野村芳太郎
脚本 橋本忍、山田洋次
出演 久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子、南原宏治、加藤嘉

鵜原貞子(久我)の夫憲一(南原)は、新婚一週間で失踪。鵜原憲一が、それまで勤務していた金沢から東京に戻るため、事務引継を目的とした金沢出張中の出来事であった。貞子は、憲一の勤務先博報社の社員とともに、金沢まで出かける。失踪した憲一を探して、夫の得意先である室田耐火煉瓦会社を訪ねる。そこで、英語の流暢な店員(有馬)を見かける。その後、室田社長(加藤)の自宅を訪ねると、その家の姿は、憲一が残していた洋館の写真に同じだった。室田と若い妻(高千穂)に、憲一の金沢での生活を尋ねるが、なにも手がかりを得られず。その後、憲一の兄が、金沢に滞在している貞子を訪ねてくる。しかし、その兄も貞子と別れた後、鶴来の旅館で殺されてしまう。ヤセの断崖を舞台に、終戦直後立川の出来事が要因となって生じた悲劇の物語。原作とは、若干、シーケンスが異なり、また、殺人事件などに相違点はあるが、おおむね原作を映画で再現したもの。1972年に廃線となった北陸鉄道能登線など、鉄道関係の映像もよい感じ。



黒い画集 第二話 寒流 昭和36年11月 東映 モノクロ
監督 鈴木英夫
池辺良、新珠三千代、平田昭彦、志村喬、宮口清二、丹波哲郎

有楽町に本店がある安井銀行では、勢力争いをしている常務取締役桑山(平田)派が、副頭取派を圧倒し始めていた(副頭取派を寒流、常務派を暖流と呼んでいる。)。役員会で、常務は、今後有望な池袋支店の支店長に常務の友人である沖野(池辺)の抜擢を主張し、押し通す。池袋支店長となった沖野は得意先回りで、割烹料理屋「ひらの」の美人女将前川(新珠)と出会う。前川が、店増築のための借り入れを沖野に申し込み、沖野はなんとか奔走して、融資を実現する。こうした付き合いをしているうち、沖野、前川は関係を持つようになる。女癖の悪い桑山は、ある日、池袋支店で前川と出会い、一目で、彼女を気に入る。そのころ、前川は更なる融資を沖野に頼み込んでいたが、沖野の権限では困難であると答えていたところであるが、桑山は、手が無いわけではないということを仄めかす。桑山は、沖野に、前川をゴルフのための一泊旅行に連れ出すよう命令し、湯河原温泉に宿をとってゴルフに出かける。ゴルフから帰った沖野は妻が睡眠薬多量服用による自殺未遂をはたらいていたことを知る。桑山は沖野を排除すべく、沖野を宇都宮支店に左遷する。沖野は途方に暮れて、桑山に対する仕返し?の画策を始めるが。本作では、私立探偵伊牟田(宮口)、総会屋の福光(志村)、15、6名の羽織・袴の男達を引き連れて登場する東京建設会社山本組社長(丹波)など、大物俳優が、うまく配置されている。基本的に、原作「黒い画集・寒流」の流れに沿ったストーリー展開。ただし、結末は原作と異なる。全体は、どうしようもなく圧迫感のある映画であるが、山本組の登場シーンでは吹き出してしまった。



黒い画集 ある遭難 昭和36年 東映 モノクロ
監督 杉江敏男
伊藤久哉、土屋嘉男、児玉清、香川京子

銀行に勤める同僚三人(江田、岩瀬、浦橋)は、夏休暇に、鹿島槍ヶ岳登山を目指す。先輩の江田は、初心者浦橋が疲れないようにと寝台車で信濃大町まで出かけ、そして、三人は登山を開始。しかし、登山がおもしろくなってきた岩瀬の調子が悪い。登山の途中、何度も休憩し、水をがぶ飲み。あと30分で八峰キレットに到着できるところまで到達するが、天候が悪化、視界が全くなくなり、やむを得ず逆戻り。しかし、道に迷ってしまい、江田は、疲れ切っている岩瀬と初心者の浦橋を残して救援を呼びに行く。しかし、寒さ、疲れ、恐怖から、岩瀬は狂ってしまい、崖から転落してしまう。岩瀬の姉、政子は、この事故に疑問を持つ。北アルプスを舞台にした映画で、本当に俳優も撮影陣も、あんな高いところまで登ったのだろうか。予想外の結末に驚かされるとてもダークな映画だった。



霧の旗 昭和40年5月公開 松竹 モノクロ
監督 山田洋次
出演 倍賞千恵子、新珠三千代、川津洋介、近藤洋介、露口茂、滝沢修

上熊本から若い女性(桐子:倍賞千恵子)が列車にのって上京するシーンで始まる。行き先は、高名な大塚(滝沢修)弁護士事務所。兄(露口茂)が、強盗殺人の冤罪で死刑になるかもしれないからお金はないが助けてくれと。しかし、大塚弁護士は断る。桐子は引き下がるが。その後、兄は死刑判決、留置所で病死。「兄は強盗殺人犯のまま死にました」との手紙を受け取り、大塚弁護士は、気になり裁判記録などを取り寄せて検討をするが、、、山田監督の唯一のミステリー。「山さん」も「さくら」も若い!。大塚弁護士に断られ途方に暮れて東京の街を歩くときに、激しく行き交う車を写しながら無音状態にしておくとか、スリリングになっていけばいくほど軽快なシャンソン風の音楽が流れるなど、音を効果的に使っていると思った。また、桐子が尾行に取りかかる前の姿を車のホイールキャップに写し、行ったり来たりする足で表現する、貧富の差を強調しているようにも思える外国人家族やピアノ練習の子供を持ってくるなど、映像表現でもすばらしいと思った。終盤の大塚弁護士と桐子が毎日歩くあの階段シーンはどこだったんでしょう(巣鴨付近の設定のようだが)。逆恨みの恐怖の物語のようにも思えるけれど、人生、絶頂期に、どこにでも落とし穴があるんですね。



けものみち 昭和40年9月公開 東宝 モノクロ
出演 池内淳子、小林桂樹、池辺良、伊藤雄之助、小沢栄太郎

病気で寝たきりの夫を看病する旅館女中の民子(池内)は、ある日、ロイヤルホテル支配人小滝(池辺)から、貧乏な生活から脱却しないかと誘われる。そのためには、夫を始末する必要があると言われ、民子は、失火を装って夫を殺害してしまう。小滝が、火災の夜に民子と飲んでいたとアリバイを証明し、警察は失火として処理をする。しかし、現場を担当した刑事の久恒(小林)は、民子が姿を消したことに疑問を持ち始める。一方、民子は、小滝に勧められるまま、政治家・財界に顔が利くと紹介された秦野弁護士(伊藤)によって、政財界の大物黒幕老人鬼頭(小沢))の邸に連れて行かれる。良い生活とは、鬼頭の愛人になることであった。鬼頭は、首都高速建設の公団総裁交代とその裏の巨大な利権を動かしていたが、その過程で、ロイヤルホテルで若い女性の殺人事件が発生する。久恒は、民子、小滝らを執拗に追跡するが。。。大物の「おじいちゃん」の下で奔放かつ悪女になっていくのにあわせて民子のメイクも徐々に派手に。とにかく妖しく、かつ、怪しすぎるし、ラストは唖然・衝撃の映画。



影の車 昭和45年6月 松竹 カラー
監督 野村芳太郎
出演 岩下志麻、加藤剛、小川真由美

日本旅行に勤務する浜島幸雄(加藤)は、東急田園都市線藤が丘からさらにバスに乗ったところの団地に、妻啓子(小川)とともに住んでいる。妻はフラワーアレンジメント教室をやっていて夫のことをかまいはしない毎日。浜島も職場と家との間を往復する平凡な日々。そこに、バスで、同郷の吉田泰子(岩下)から、話しかけられる。別の日、バスで二人はまた出会い、吉田は息子(ケンイチケンイチ)と二人で暮らす自宅に誘う。その後、二人は惹かれあい、関係を持ってしまう。しかし、息子のケンちゃんは、浜島に懐いたようで懐かないような状況。しかし、泰子と関係を持っている浜島は、ケンイチが自分に対して殺意を持っているのではないかと疑いだす。きらりと光る包丁、ガスが充満した家、鈍い光を放つナタなどと、次々に浜島を巡る出来事が。ヒッチコック級のとっても怖〜い映画。



黒の奔流  昭和47年 松竹 カラー
監督 渡邊祐介
出演 岡田茉莉子、山崎努、松坂慶子、谷口香

貧乏弁護士矢野武(山崎)は、暇だから細かく稼ぐしかないと、国選弁護人の仕事を引き受ける。事件はアベコンツェルン御曹司が、奥多摩渓谷で殺害され、旅館の女中である貝塚藤江(岡田が、被告となっているもの。本人は、犯行を否認しており、矢野は、無罪を勝ち取るべく奔走する。弁護士事務所の女事務員(谷口)が、決定的な証人を見つけて、矢野は、犯行現場から旅館に戻るのが時間的に不可能であることを証明し逆転勝訴。一躍有名に。恩師の若宮弁護士から銀行の顧問弁護士の話が来る。また、矢野は、行き場の無くなった貝塚を弁護士事務所の事務員として雇う。その後、矢野は、貝塚と関係を持つ一方で、若宮の娘(松坂)と婚約する。貝塚は婚約の話を知り、矢野をストーカーするようになるが、、、。原作は「種族同盟」。原作とは、被告の男女が異なるなどの差異はあるが骨格は同じ。映画では、貝塚が25歳の設定であるが、この時点で岡田茉莉子さんは38、9歳だったはず。。。ちょっと厳しいかな。



砂の器 昭和49年10月公開 松竹 カラー
監督 野村芳太郎
出演 丹波哲郎、加藤剛、森田健作、島田陽子、山口果林、加藤嘉、緒形拳、佐分利信、渥美清

羽後亀田で2人の刑事(丹波哲郎、森田健作)が捜査。これは蒲田操車場で起きた殺人事件に関するもの、事件の前に被害者が話していた東北弁の「カメダ」という言葉を手がかりに捜査にでていた。出張捜査が不調に終わり、帰りの急行の食堂車で天才音楽家(加藤剛)を見かけ、、、ということで、話はおおむね原作のとおりに進行。その後、カメダは島根県の亀嵩(亀嵩駅などが映る。)のではないかと考え、捜査を中国地方にも展開していく。見所は、映画後半の捜査会議での犯人の生い立ちを説明するシーン。これはかなり脚色されているが、(温暖化でいつが春・秋かわからなくなる前の)日本の美しい四季の景色と相まって感動的。



鬼畜 昭和53年10月公開 松竹 カラー
監督 野村芳太郎
出演 緒形拳、岩下志麻、岩瀬浩規、大竹しのぶ、小川真由美

男衾に住む菊代(小川)は3人の子供を連れて、川越の印刷屋業を営む竹下宗吉(緒形)のもとに押しかける。菊代は、竹下が浮気して生ませた子供達との生活費を送ってこない竹下を責める。竹下の妻梅(岩下)は、7年間も騙されたとして宗吉と菊代・3人の子供達を責め立てる。菊代は怒り出し、3人の子供達を竹下のもとに置き去りにしてしまう。梅は3人の子供達の面倒は見ないと宗吉を責め立て、また、子供達にもあたりつける。そんなある日、末っ子が栄養不十分で衰弱死してしまう。が、宗吉は、梅が意図的にそうしたと捉え、残る二人も始末しなければと考え出す。妹の方を、東京タワーに置き去りにし、残る長男をどうするか、途方に暮れつつ、宗吉は長男とともに旅立つ。ラストは、原作を発展させた親と子供の絆を表したものとなっている。兎に角、よくこんな映画を撮ったと思う。幼児虐待じゃないか。。。



疑惑 昭和57年9月公開 松竹 カラー
監督 野村芳太郎
出演 桃井かおり、岩下志麻、鹿賀丈史、小林稔侍、仲谷昇、丹波哲郎、柄本明、山田五十鈴

富山新港埠頭からクラウンが転落、乗車していた白河(鬼塚)球磨子(桃井)が、埠頭でつりをしていた人々に助けられた。しかし、車内には、白河酒造の福太郎氏(仲谷)が水死していた。球磨子は前科4犯。福太郎氏が東京のバーで彼女を知り、白河家が反対する中、後妻として迎えていた。球磨子が受取人となっている福太郎氏の生命保険は3億円、マスコミも警察も、この事件は、球磨子が仕組んだ保険金目当ての殺人ではないかと疑った。その後、球磨子が運転していたとの目撃証言もあり、球磨子は殺人容疑で逮捕され、裁判に。当初、依頼を受けた弁護士は、周囲の反対などから辞任、結局、国選弁護人として佐原律子(岩下)が球磨子の弁護をすることに。球磨子の容疑は、昔の男(鹿賀)らの証言により、殺人の疑いがますます濃厚となっていく。この映画は、とにかく、桃井かおりの悪女の演技が凄いし、冷静な弁護士役の岩下志摩の演技もなかなか。最後のワインのかけ合いも印象に残る。



天城越え 昭和58年 松竹 カラー
監督 三村晴彦
出演 渡瀬恒彦、田中祐子、吉行和子、金子研三、伊藤洋一、樹木希林、小倉一郎、石橋蓮司、柄本明、坂上二郎、北林谷栄、加藤剛、平幹二郎

静岡の港印刷に田島(渡瀬恒彦)となのる老人が、昭和15年6月28日の晩に天城峠で発生した土工殺人事件の事件簿の印刷を依頼に来た。田島は、当時、下田署の刑事で、自ら捜査した事件の記録。港印刷の経営者小野寺(平幹二郎)は、天城峠の文字をみて、かつて14歳の頃に天城峠を越えたときの記憶を呼び戻す。鍛冶屋の息子であった田島は、母と叔父の情事を目撃してしまい、家出をした。しかし心細くなって戻る途中に出会ったのは、優しい娼婦ハナ(田中)であったというもの。当時の事件捜査は、死体が見つからないまま進められた。近くの氷倉に、大人の男のものとは考えられない小さめの足跡、土工が持っていた1円札、小野寺少年がハナに出会ったという証言などで責め立てられ、逮捕されたハナは自白、そして起訴に。昭和57年に伊豆で撮影されたのだと思う。旧天城トンネル付近の景色はいかにも戦時下の昭和の風景とも思えるが、天城峠をくだっていく道筋は、すこし整備されすぎている感じもする。自白後、下田署から移送される田中祐子のなんとも言えない表情(優しさと理不尽さの主張が混ざったような表情)の顔のアップが強烈に印象にのこる。


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